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この記事では、SalesforceからHubSpotへ移行する理由 と、
実務の現場で「移行相談」が増えている背景について整理します。
これまでの講義・動画では、SalesforceとHubSpotの違いや、
コストシミュレーションなどを見てきましたが、
ここでは一度立ち止まって、
  • そもそも、どんな会社がHubSpot移行に向いているのか?
  • 逆に、「今は移行しない方がいい」ケースは?
  • なぜ最近、移行相談が増えているのか?
といった視点でまとめていきます。

1. SalesforceからHubSpotへ移行する主な3つの理由

現場で実際に支援していると、
Salesforce → HubSpot移行の理由は、だいたい次の3つに集約されます。
  1. コストが高く、予算を圧迫している
  2. 機能を使い切れておらず、投資対効果が合わない
  3. マーケティングと営業を一元管理したい
順番に見ていきます。

1-1. 理由①:ライセンス・サポート費用が高く、売上や機能に見合わない

1つめは、非常にシンプルです。
  • Salesforceのライセンス費用
  • サポート費用(保守費、代理店費用、運用委託費 など)
が高く、売上規模や実際の活用内容に見合っていない というパターンです。 具体的には、こんな声が多く聞かれます。
  • 「売上規模に対して、Salesforceのランニング費用が重い」
  • 「そこまで高度なことはしていないのに、エンタープライズ級の料金を払っている」
  • 「代理店費用や保守費まで含めると、年間予算をかなり圧迫している」
これまでの講義やシミュレーションでも触れてきた通り、
コスト削減は移行理由として最も大きな要素 になりやすいです。

1-2. 理由②:高度な仕組みを使いこなせておらず、宝の持ち腐れになっている

2つめは、「機能を使い切れていない」 というパターンです。 Salesforceは非常に高機能で、
設計次第でほとんど何でもできるプラットフォームです。
一方で、
  • 仕組み・権限・オブジェクト構造が複雑
  • 管理・開発をできる人材が社内に限られる
  • 設計した人が異動・退職するとブラックボックス化する
といった事情もあり、特に
  • 中小企業
  • スタートアップ
では、
「正直、標準的なCRM+SFAレベルしか使えていない」
「高度なワークフローやカスタム開発までは手が回らない」
というケースが少なくありません。 その結果、
  • 機能レベルは「王様クラス」なのに、
  • 実際の活用度は中レベル以下
というギャップが生まれ、
投資対効果が合わない と感じられるようになります。

1-3. 理由③:マーケティングと営業を一元管理したい

3つめは、マーケティングと営業の一体運用 を重視するケースです。 HubSpotはもともとインバウンドマーケティングのプラットフォームとしてスタートしたサービスです。
そのため、
  • リード獲得(広告、セミナー、Webコンテンツ、フォームなど)
  • メールマーケティング・ナーチャリング
  • 営業案件・商談管理
1つの基盤の上でつなぎやすいのが特徴です。 最近では、HubSpot側でも「営業管理」まわりの機能がどんどん強化されており、
  • マーケティングで獲得したリードの情報
  • 営業の商談・活動履歴
を紐付けて一元管理したい企業にとって、
HubSpotは非常に相性が良い選択肢になってきています。

2. 逆に「今はSalesforceのままでよい」ケースもある

一方で、すべての会社がHubSpotに移行すべきかというと、
決してそうではありません。
実際にSankaでも、
「このケースなら、正直Salesforceのままの方が良いですね」
とお伝えすることがあります。
その代表的なパターンが次の3つです。

2-1. 外部システム連携・カスタム開発をガッツリやりたい

Sankaは外部システムとの連携開発も数多く担当していますが、
その立場から見ても、
「Salesforceではできないけれど、HubSpotならできる」
というケースはほとんどありません むしろ、
  • AppExchangeの豊富なアプリ
  • 外部システム連携の実績
  • カスタム開発の自由度
といった意味では、Salesforceの方が優位と言えます。 そのため、
  • さまざまな業務システムと複雑に連携したい
  • 自社専用の高度なカスタム画面・ロジックを実装したい
といったニーズが強い場合は、
Salesforceを軸に検討し続ける方が合理的 なことも多いです。

2-2. ガリガリとしたカスタマイズを最優先したい

HubSpotも拡張・連携はできますが、
“なんでも好きなように作り込める開発基盤” というよりは、
「マーケ・セールス・CSの標準的なベストプラクティスを
ある程度パッケージ化したプラットフォーム」
という性格に近いです。 そのため、
  • 既存の業務フローをほぼそのままシステム化したい
  • 細かい画面挙動や独自ロジックまで徹底的に作り込みたい
という場合は、
Salesforceの方が自由度が高い と感じるはずです。

2-3. 「今のベンダーへの不満」だけで移行を決めようとしている

最後は意外と多いパターンです。
  • 「今お願いしているSalesforceの代理店が全然動いてくれない」
  • 「要望を出してもレスが遅い、提案も少ない」
といった不満から、
「じゃあいっそHubSpotに移行してしまおうか?」
となっているケースです。 ただ、この場合、
  • 問題の本質は「ツール」ではなく「ベンダー」の可能性が高い
ことも多く、
まずはSalesforceの中で別のパートナーを探す
という選択肢も十分に検討すべきです。

3. なぜ今、Salesforce→HubSpot移行の相談が増えているのか

ここからは、「なぜ今、HubSpot移行相談が増えているのか」 について触れます。 まず最初に、1つ大事な前提があります。
公開データとして、「何社がどちらからどちらに移行したか」という正確な統計はほぼ存在しない
ということです。
  • HubSpot → Salesforce への移行もあれば
  • Salesforce → HubSpot への移行もある
ものの、絶対数や全体トレンドは外からは見えません。 この記事・講義でお伝えしているのは、
「業界全体で必ずHubSpot移行が増えている」という話ではなく、
あくまでSankaが受けているご相談案件の中で、
Salesforce → HubSpot移行ニーズが増えている
というレベルの話だとご理解ください。 そのうえで、「なぜ相談が増えているのか?」を整理すると、
おおよそ次のような要因が見えてきます。

3-1. コスト削減・最適化ニーズの高まり

不況やコスト見直しの流れの中で、
  • IT予算の見直し
  • サブスクリプションの棚卸し
  • ツールの集約・統合
といったテーマが、どの企業でも強くなっています。 その中で、
  • Salesforceで実施していることを
    HubSpotに置き換えた方が、
    トータルコストを下げられそう
という観点から、
移行検討の相談が増えている という背景があります。

3-2. HubSpotの「閲覧権限アカウント」で全社展開しやすくなった

HubSpotには、閲覧専用の ビューオンリーアカウント を作れる仕組みがあります。 これにより、
  • 営業・マーケ以外(管理部門、コーポレート、オペレーションなど)にも
  • 追加ライセンス費用をかけずに情報を共有できる
ようになります。 Salesforceでは「見るだけの人」であってもユーザーライセンスが必要になるケースが多く、
  • 「本当は全社で見たいが、費用の都合で営業・マーケだけに絞っている」
という会社も少なくありません。 HubSpotなら、コストを抑えながら全社的な情報共有がしやすい ため、
この点を評価して移行を検討する企業も増えています。

3-3. 使いやすさ(UI/UX)への期待値が上がった

近年、B2BのSaaSにおいても、
  • 「業務アプリだから多少使いにくいのは仕方ない」
という考え方から、
  • 「業務アプリこそ、直感的で使いやすくあるべき」
という考え方に変わってきています。 その中で、
  • UIが分かりやすく、オンボーディングがしやすい
  • 非エンジニアの担当者でもある程度自走しやすい
といった理由から、
HubSpotの「使いやすさ」を重視する企業が増えています。

3-4. HubSpot自体の機能強化が進み、「できること」が増えた

以前は、
「この機能はSalesforceならできるけど、HubSpotだと厳しい」
という場面も多くありました。 しかし、ここ数年でHubSpot自体の機能開発ペースが上がり、
  • セールス機能
  • ワークフロー・自動化
  • カスタムオブジェクト
  • レポーティング
などの領域で、
「今までHubSpotでは足りなかった部分」 がかなりカバーされるようになってきました。
これにより、
  • 「以前はHubSpotではできないから諦めていた構成」が
  • 「今ならHubSpotでも十分実現できそう」
に変わってきており、
そのタイミングで移行検討が再燃している企業もあります。

3-5. マーケティング・営業・CSの一元管理というトレンド

「マーケティングはマーケのツール、営業は営業のツール、
カスタマーサポートはサポートのツール」というようにバラバラに運用していると、
  • 顧客の全体像が見えにくい
  • どの施策が収益につながっているか追いづらい
  • 部門間の連携が取りづらい
といった課題が生まれます。 そこで、
  • マーケティング
  • セールス
  • カスタマーサービス
1つのプラットフォーム上で一元管理するというトレンドが強まっています。 たとえば、
  • 「Google広告経由で来たリードは、このような商談プロセスを通すと受注率が高い」
  • 「ウェビナー参加者からの案件は、どのステージで詰まりやすいのか」
といったことを、
マーケ〜営業まで通しで分析・改善していく動きです。
HubSpotは、まさにこの「一気通貫管理」をしやすい構造になっているため、
このトレンドとも相性がよいと言えます。

3-6. データ移行のハードルが下がってきた

最後に、技術的なハードルの話です。 以前は、
  • CRMのデータインポート/エクスポート
  • 項目マッピング
  • クリーニング・変換
といった作業に、かなりコストと時間がかかりました。 しかし現在は、
  • 各種ツール・コネクタの充実
  • データ移行専用サービスやテンプレートの普及
  • ベンダー側のノウハウ蓄積
によって、
「Salesforce → HubSpot」
「HubSpot → Salesforce」
のような双方向のデータ移行が、以前よりもずっと現実的にこなせるようになっている
という背景もあります。

4. トレンドに流されず、「自社に合うか」を軸に判断する

ここまで読むと、
「なんだかHubSpotに移行するのがトレンドなんだな」
と感じられたかもしれませんが、
最も重要なのは、
トレンドではなく、「自社にとって本当に合っているか」
です。 これまでの講義・記事では、
  • SalesforceとHubSpotの機能・思想の違い
  • コストシミュレーション
  • 移行が向いているケース/向いていないケース
などを、なるべくフェアな視点で整理してきました。 そのうえで、
  • 「コストが高すぎる」
  • 「機能を使い切れず、宝の持ち腐れになっている」
  • 「マーケと営業を一元管理したい」
というニーズに強く当てはまる企業は、
HubSpot移行を検討する価値が高いと言えます。
逆に、
  • ガリガリとしたカスタム開発を最優先したい
  • AppExchange前提でエコシステムを組んでいる
  • 今の課題はツールではなく、パートナー(ベンダー)側にある
といった企業は、
Salesforceを軸に改善する方が健全なケースもあります。

5. 次のステップ:本格的な移行準備へ

ここまでの内容を踏まえて、
「よし、うちはSalesforceからHubSpotへの移行を前向きに検討したい」
と感じられた方は、
次のステップとして**「準備編」**に進んでいくことになります。
次のセクションでは、例えばこんな内容を扱っていきます。
  • Salesforceにあるデータの棚卸し・一覧化
  • 移行対象とするオブジェクト・項目の整理
  • 社内リソース(担当者・時間)の確保
  • プロジェクト体制・進め方(社内/ベンダーの役割分担)
など、実務的な準備の進め方を具体的に解説していきます。 HubSpot移行に少しでも興味があれば、
ぜひ次の記事・講義もあわせてご覧ください。