この記事では一歩踏み込んで、実際にどの程度コスト削減が見込めるのか を
シミュレーションしながら解説していきます。
1. まず押さえておきたい:HubSpotの無料CRM機能
HubSpotには、無料で使えるCRM機能 が用意されています。有料プランに入る前に、まずはこの無料機能からスタートするだけでも
「自社に合うか?」を試すには十分な内容です。 代表的な無料機能は次のとおりです。
- 顧客管理(コンタクト管理)
- 見込み顧客・既存顧客の情報管理
- 会社管理
- 取引先企業ごとの情報を整理・一元管理
- 取引(ディール)管理
- 商談パイプラインの管理、進捗ステータスの可視化
- メールマーケティング(一定数まで無料配信可能)
- 基本的なレポート機能
まずは無料版で操作感や画面構成に慣れてから、
「もっとやりたいこと」が出てきた段階で有料プランを検討する流れがスムーズです。
2. HubSpot有料プランのざっくり価格感
詳細はHubSpot公式サイトの料金ページで確認いただくのがベストですが、おおよその価格感は以下のようなイメージです(記事執筆時点の例):
- マーケティングハブ・プロフェッショナル
- 月額:約10万円〜
- マーケティングハブ・エンタープライズ
- 月額:約43万円〜
- セールスハブ
- プロフェッショナル:1ユーザーあたり約1万円〜
- エンタープライズ:1ユーザーあたり約1万8,000円〜
移行した場合のコスト削減インパクト を見ることが目的なので、
ここでは価格感だけ押さえておきます。
3. Salesforce → HubSpot移行でよくあるコスト削減パターン
最近、実務の現場で「SalesforceからHubSpotへ移行したい」 という相談が非常に増えています。 案件を多数支援してきた感覚値としては、
年間契約費用ベースで30〜50%程度のコスト削減 が見込めるケースが多くなっています。
なぜそんなに下がるのか?
特に大きいのが、ユーザー数の考え方の違い です。- Salesforceでは
- 「見るだけでいい人」も通常ユーザーとしてカウントされ、
30〜40ユーザー分のライセンス費用が発生しているケースが多い
- 「見るだけでいい人」も通常ユーザーとしてカウントされ、
- HubSpotでは
- 「ビュ―オンリー(閲覧専用ユーザー)」が無料 で利用可能
- 実際に編集したり運用したりする人だけを有料ユーザーにすればよい
「実際にフル機能が必要な人は10人程度なのに、といった会社では、ユーザー設計を見直すだけで大きな削減 につながります。
30ユーザー分のライセンスを払っていた」
4. コストシミュレーションの前提条件
ここからは、実際にExcelシートを使ったコストシミュレーションのイメージ を文章で整理していきます。 シートでは、以下のような前提条件を置いています。
期間
- 2025年〜2027年までの 3年間
- 月次ベースで費用を計算
Salesforce側の前提
- 現在の月額費用:50万円
- 毎年の値上げ(またはディスカウント率の低下)を
年率8%アップ と仮定
HubSpot側の前提
- 移行後の月額費用:
Salesforceの約半分と仮定し 25万円/月 - 年間の値上がりまたはディスカウント低下分:
年率5%アップ と仮定
- 閲覧専用ユーザーを無料にできる
- 必要なアプリを統合してライセンスを削減できる
といった効果も含まれています。
初期費用の前提
- 移行・導入の初期費用:100万円
- 要件整理や設計
- データ移行(Salesforce → HubSpot)
- 最低限の設定・カスタマイズ
- トレーニングや立ち上げサポート
外部ベンダーに依頼する場合は見積もり次第ですが、
ここでは 「ツールやノウハウを活用して効率的に移行したケース」 として、
現実的なラインとして100万円をセットしています。
5. シミュレーション結果:何ヶ月で元が取れるのか?
上記の前提でExcel上に計算式を組むと、次のようなイメージの結果が見えてきます。
5-1. ブレークイーブン(損益分岐点)
- Salesforce:月額50万円(年8%で上昇)
- HubSpot:月額25万円(年5%で上昇)
- 初期費用:100万円
約4ヶ月程度で移行コスト(初期費用)を回収 できる試算になります。 つまり、
「半年も経たないうちに、というイメージです。
HubSpot側の低コストによって初期投資分がペイする」
5-2. 年次ベースのコスト削減額
同じ条件で3年間の合計コストを比較したところ、あるケースでは次のような削減額が出ています。
- 1年目の削減額:約227万円
- 2年目の削減額:約563万円
- 3年目の削減額:約902万円
そのまま 利益に直結するインパクト になります。 ここでの削減は主に、
- ツール費用の削減
- ITシステム関連の間接費削減
- 「移行した結果、業務が回らなくなった」
- 「必要な機能がなくなってしまった」
「機能は維持、もしくは改善しつつ、コストは下がる」 という前提が重要です。
6. シミュレーション用テンプレートについて
この記事で触れているシミュレーションは、Excel形式の「CRM移行テンプレート」 上で行っています。 テンプレートでは、例えば次のような項目を入力・調整できます。
- 現在利用中のSalesforceの月額費用
- 年間の値上げ率
- HubSpot移行後の想定月額費用
- HubSpot側の値上げ率
- 初期費用(移行プロジェクト費)
- 期間(何年間で見るか)
- 月次・年次のコスト推移
- ブレークイーブンポイント(何ヶ月目で元が取れるか)
- 年ごとの累計削減額
「感覚」ではなく「数字」で移行判断ができる ようになります。
7. コスト削減はゴールではなく「スタートライン」
ここまでお話してきたのは、あくまで 「コスト面だけの話」 です。 実際のプロジェクトでは、- マーケティング・セールス・カスタマーサポートが
1つのプラットフォームに統合されることによる生産性向上 - データがバラバラだった状態から、
一気通貫で見える化されることによる意思決定スピードの向上 - 属人的な管理から、
誰でも追えるプロセスに変わることで組織としての再現性が高まる
コスト削減で利益率が上がるというのが、CRM移行プロジェクトの本質的な価値です。
+
売上そのものを伸ばすための基盤にもなる
8. まとめ:数字で語れる準備をしよう
SalesforceからHubSpotへの移行を社内で提案する際、- 「なんとなく安くなりそう」
- 「巷で移行事例が増えているらしい」
- 前提条件を明示したうえで
- 3年間のコスト推移を比較し
- ブレークイーブンポイントと削減額を数字で示す
社内の同意や決裁も非常に通りやすくなります。
9. 次の記事予告
次回は、- なぜ今、SalesforceからHubSpotへの移行が増えているのか?
- どのような企業が移行に向いているのか?
- 実際に移行準備を始める際に押さえておくべきポイント
ぜひ次の記事もあわせてチェックしてみてください。